祖父江慎さん(アートディレクター)
ピノッキオの挿絵から5冊
2022年2月4日
祖父江慎(アートディレクター)
1959年、愛知県生まれ。出版社の工作舎でのアートディレクションを経て、1990年、自らのデザイン事務所コズフィッシュを立ち上げる。あらゆる印刷物への「うっとり力」で独創的な意匠をうみだし、ブックデザインは、漱石『心』(岩波書店)をはじめとする2,000冊以上を手がける。「スヌーピーミュージアム」などの展覧会デザインでも活躍する。
『ピノッキオ』最初の単行本。挿絵は素描画家マッツァンティによるもので、ちょっとゆるい挿絵。内容までコミカルになりそうですね。
コッローディが亡くなった後、出版社もかわって挿絵も新しくなり少し大きくなりました。キオストリの銅版挿絵は細かくリアルです。まるで本当に木の人形が動き出したように感動的です。イタリアのテレビドラマ「ピノッキオの冒険」(1974)の最初のタイトルバックにもこの絵が使われました。当時中学生だった僕はこの絵が大好きでした。
日本で最初に出版された『ピノチヨ』は当時小学5年生のアヤちゃんによるものでした。アヤちゃんがお父さん(西村伊作)に読み聞かせてもらった『ピノッキオ』は、佐藤春夫からかりたアメリカ本で、コープランドの挿絵が入ってたんです。その後で出版された佐藤春夫が訳した『ピノチオ』にもこの挿絵が入ってます。日本人にとってはじめてのピノッキオはこんなふうだったんですね。
前代未聞の挿絵だらけの本といえば、これです。挿絵が半端なく丁寧で美しく、印刷や文字、レイアウトにおよぶ全てが丁寧につくられている美しい「ピノッキオ」ですね。こんな本が今でも作れるといいのにな。うっとり。
ピノッキオを愛するポップアート美術家、ダインによる挿絵は明るく愉快ですね。鼻ののびるシーンはリアルだし、首吊りシーンも暗くない。ダインは立体のピノッキオ作品もつくっているの♥