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2023.12.22

展示会「桜新町の野尻抱影 星と文学を愛し、隣人と語らう」について

「桜新町の野尻抱影 星と文学を愛し、隣人と語らう」

 

“星の美や神秘は、純粋の天文学者には、少くも研究室のドアの外のものであろう。
けれど文学者畑の私は、星を仰いだり星を談(かた)るときにはもちろん、
それが天文学の埒内(らちない)に入っているときでも、
いつも星を讃え星に驚こうとしている自分に心づく“
(「『星』序」、昭和16年)

 

英文学者であるとともに、数多くの著作を通じて人々に星、星座、天文への関心、親しみを広めた野尻抱影(本名:正英(まさふさ)、明治18~昭和52、1885~1977)。
抱影は横浜で生まれ育ち、中学生の頃から星や星座、天文学に関心を深める一方で、文学を志して明治35(1902)年に早稲田大学文学部英文科に進みました。早稲田では小泉八雲や島村抱月に教わり、相馬御風(詩人、歌人)、会津八一(東洋美術史、書家)らと同級となって在学中から翻訳などを発表。卒業後は旧制中学校の英語教師を経て出版社に勤めました。
大正7(1918)年、両親の住む荏原郡駒沢村の新町(のち桜新町)停車場近くの家に子どもたちと暮らしはじめ、昭和36(1961)年に国道246号整備のために瀬田に移るまで、
この地で数多くの著作を記します。さらにロシア文学者の中村白葉や小説家の志賀直哉、詩人の中込純次、画家の緑川広太郎、若山為三、郷倉千靭ら桜新町に住む文化人芸術家との交流が生まれ、子どもたち、学生、近所の人たちを交えて、抱影自慢の天体望遠鏡「ロングトム」で星を観る集いも行われました。
抱影は若い頃から文学・芸術に親しみ、文才に富み、談話も上手で志賀直哉の小説や随筆の題材になるほどでした。その抱影による星についての作品や講演は、科学者とは別の視点で、星に関する古今東西の文献、言い伝えまで調べあげた知識が惜しげもなく披露されますが、専門家しか分からない難解さはなく、誰にとっても面白く、自然と興味が湧いてくるものです。
「天文少年にかぎらず、多くの人がひそかに自分の〈抱影時代〉をもっている*」―
人間が宇宙と往復する時代になっても、私たちは夜空の月や星の美しさに目をみはり、宇宙の謎に好奇心をかきたてられます。抱影が愛したオリオン座が美しく見える季節に、古の人たちが願いやロマンを託した星の名の話や物語をもう一度繙(ひもと)いてみませんか。

*池内紀「解説 悪い奴ほどおもしろい」、『野尻抱影の本4 ロンドン怪盗伝』、平成元年、筑摩書房)

【開催期間】 2023年12月22日(金)~2024年2月28日(水)
【主  催】 世田谷区教育委員会事務局 教育政策・生涯学習部 中央図書館
【会  場】 世田谷区立中央図書館(世田谷区弦巻3-16-8)展示場所/1階(入口ケース・テーマ展示本コーナー)地下1階
【特別協力】 公益財団法人せたがや文化財団世田谷文学館

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